「アジャイルコーチとスクラムマスターの集い」に参加してきた

はじめに

9/12-14で「アジャイルコーチとスクラムマスターの集い」に参加してきました。 www.attractor.co.jp

私は初めて参加しました。私以外にも初参加の方は何名かいましたが、全体としては2回目、3回目の参加の方が多い印象でした。
開催場所はライムリゾート箱根という箱根のめちゃめちゃ快適な合宿用施設です。 バスタ新宿からバスで1本で行けるというのも楽で良かったです。

参加の目的・背景

3日間OSTなどを活用して研鑽するというプログラムを見て「これ絶対参加しないとわからないやつだ。」と思い、申し込みました。
申し込んだ時はこの営みのことをよく分かっていなくて*1、過去の回に参加された方は参加しないものだと思い込んでいたので、申し込んだ後、過去回の写真に写っていたコーチの方々も参加されると知り、ミーハー気分で高まりました。(漫画「ミワさんなりすます」のミワさんはこんな気分なんだろうなぁと妄想しました。)
その一方で「憧れは理解から最も遠い感情だよ」と心の中で藍染惣右介が囁くので、今回コーチの方々とお話しすることで、コーチの方々がアジャイルとどう向き合ってきたのかを理解したいと考えていました。

参加した感想

参加者の皆様とOSTで色々な話を聞いたり、自分の出したテーマについて話し合ったり、散歩しながらお話ししたり、温泉入りながらお話ししたり、美味しいビールを飲みながらお話ししたりできて、最高に楽しかったです。何年経ってもこの3日間を忘れないと思います。
特に良かったのは、自分がアジャイルに携わり始める前のお話を聞けたことと、OSTでテーマを2つ出して、それについて話し合ったことなので、これらについて述べます。

アジャイル黎明期のこと

私はDXを推進するという文脈の中で2018年からアジャイル開発に携わり始めたので、それ以前のアジャイルの黎明期のことが分からなかったのですが、そのあたりを色々なコーチの方々にお伺いして、理解を深められたことが良かったです。
特に「アジャイル開発宣言」が出たときにどう感じたか?を、何名かの方にお伺いして、「共感した」や「ふわっとしたことを言っていると思ったというのが第一印象」といった、その時の感想を教えてもらえたことが良かったです。(「アジャイル開発宣言」は今だと原典として扱われていて、それがなかった時代や出た瞬間を想像できないので。)
その他にもコミュニティや研修、書籍についても色々お伺いできて、コーチの方々がどういった姿勢で仕事に臨んでいたり、コミュニティに貢献されているのかをお伺いできました。
ただまだまだ聞き足りないので、コミュニティ活動などを通して色々な方にお話をお伺いし、ゆっくり理解していきたいです。

OSTテーマ1【観察できているのか?】

テーマを出した背景

以前参加した観察力がテーマのワークショップで、人々の行き交うバス停の様子を収めた動画を見て、観察したことを書き下すというワークを実施しました。
私はSMとしてチームを観察しているつもりだったので、このワークでも成果を出せると思っていたのですが、蓋を開けてみると、[ 1 ]記述量は一番たくさん書けていた人の1/5程度、[ 2 ]多くの方が気づいていた「人々の様子を見るに、バス停の文字盤が見づらい可能性が高い」というポイントにも気づけていないという散々な結果でした。
SMはチームを観察して得た情報をインプットに次のアクションを判断するので、観察できていないポイントがあったということは、少ない情報量で次のアクションを決めていたことになり、これにより質の低い判断をしていた可能性があると感じ、怖くなりました。
そこでこのセッションでは、他のコーチの方々は何をもって観察できていると考えているのか、また観察力を鍛えるために意識していることをお伺いしたいと思いました。

書き留めた付箋たち

受け取ったアドバイスと今感じていること

まず学生時代人類学を専攻していたという石井食品の石井さんに「観察は人類学でも大きなテーマになるものだが、人は先入観で見るもの、見ないものを取捨選択しているので、そもそも全てを見るすることはできない」と大前提となるコメントをいただき、その上で「チームで見たものを持ち寄って、対話する方法もある。」とアドバイスをいただきました。
このアドバイスをいただいた時、「観察はSMの重要な役割だから、自分が高いレベルでやり遂げる必要がある」という考えに自分が囚われていたことに気づき、自分が山王戦のゴリの状態に陥っていたんだと気づきました。

おそらく現段階でオレは河田に負ける でも 湘北は負けんぞ

というやつです。自分ひとりで達成できないことがあるなら、周りの力を借りて、チームとして判断の質を上げていけばいいだけ、と気づけました。

また「観察できている/できていない、より重要なことは、観察などを通して得たインサイトを頭の中でどう構造化するか。観察もインサイトを構造化するためのインプットの1つに過ぎない」というアドバイスをいただきました。
「観察もインプットの1つに過ぎない」という点については、最近はトライアンギュレーション*2を意識して様々な人の話を聞いたり、成果物を見たりして判断をするよう心がけているところだったので、これを継続します。「インサイトの構造化」は今まで意識していなかったので、これから意識します。

OSTテーマ2【SMはチームに「プロセスより対話」をどう伝えればいい?】

テーマを出した背景

私はSMはアジャイルスクラムの価値観を理解した上で、それを示す行動を率先して行い、その背中をチームに見せることが重要だと考えて、そのようにふるまっているつもりでした。特に「プロセスやツールよりも個人と対話を」は強く意識して、DEVが最初の一歩を踏み出せないところのサポートやPOの困りごとの相談・対応には注力してきたつもりでした。
しかし自分がSMの任を外れてチームの外に出た後にチームを観察すると、「スクラムだと◯◯だから」とスクラムが都合のいい言い訳に使用されるシーンや、「これはPOの役割」「これはSMにやってほしい」「これはDEVよろしく」などセクショナリズムの兆候を示すシーンが頻繁にあることに気づきました。
私はスクラムもプロセスでしかないので、価値あるプロダクトを開発するため、チームのお互いの状況に関心を寄せた上で、自分たちに最適なプロセスを対話を通して探索してほしいと思っていましたが、そういった想いはチームに全く伝わっていなかったのです。
この経験を通して、背中を見せることでアジャイルスクラムの価値観までチームに伝えられると考えるのはSMに都合の良い幻想で、背中を見せる以外の方法で、アジャイルスクラムの価値観をチームに伝える必要があると思ったので、参加者の皆さんがこの辺りをどう意識されているかを伺いました。

書き留めた付箋たち&様子

受け取ったアドバイスと今感じていること

「現場の細かい話をすると拠り所がなくなってしまい「これはPO」みたいな結論になりがちなので、『なんでプロセスより対話が大事なんだと思う?』と問いかけたり、『逆に対話よりプロセスを大事にするとどうなるでしょう?』と問いかけて嫌なことを書き出すと良い」というアドバイスをいただきました。私は現場の細かい話からスタートをして、結果としてチームが腹落ちする結果に辿り着けないこともあったように思うので、これはぜひ実践したいと思いました。
また「背中を見せるだけだと、チームからはSMが選択しなかった行動が見えず、その判断基準が分からないので、判断基準をチームに示す必要がある。その上で、意図が伝わっているか直接メンバに確認するような営みは必要」というコメントもいただきました。このコメントをくださった方は、この3日間折を見て「何を学びましたか?」など様々な問いかけをしてくださって、「伝わっているか確認する」というコメントを背中で示してくださっていたと、今ふりかえって感じます。
スクラムはゴールではなくゲート。スクラムの先に自分たちの目指すべきスタイルがあるとチームに伝える必要がある」というコメントもいただきました。スクラムがゴールではないということは理解していたつもりですが、果たしてそれをチームに伝えて、スクラムの先にある自分たちにあったスタイルをメンバみんなで目指せていたかというと、そうではなかったので、今後はスクラムのその先を目指します。スクラムの先にゴールがあるという意識をメンバみんなで持てれば、会話は「スクラムだと◯◯だから」で止まらず、「スクラムだと◯◯だよね。これは何でだろう?自分たちはどうすべきだろう?」というところまで踏み込めると思うので。
さらに「背中を見せる行為自体は尊いことで、それをしなくなると理論だけ、口先だけの存在になってしまうので、背中を見せる行為は続けた方が良い」という励ましのコメントもいただきました。この時自分は、背中を見せる行為はプラクティスレベルを伝えるためには有効でも、価値を伝える上では有効に機能しないような気持ちになっていました。このコメントをいただいたことで、背中を見せる行為の問題ではなく、自分がまだ上手に背中を見せる行為ができていないことが問題で、そこを改善していけば良いのだと気づけて、めちゃめちゃ勇気づけられました。
この3日間ずっといい体験をさせてもらいましたが、自分の心が一番震えた瞬間を選ぶとしたらこの時だと思います。

最後にちょっと余談で、帰り道で高江洲さんとお話しさせていただいた時、2年前に参加したアジャイルマインド・インストレーション体験セミナーの話になりました。(参加レポート:アジャイルマインド・インストレーション体験セミナー参加レポート - 其未来
このセミナーの中で、高江洲さんが考案された「スクラム・ペルソナ・ロールプレイ」というワークショップを実施していたのですが、今思うと、このワークショップの内容は今の自分の困りごとにドンピシャで刺さる内容でした。
すごくいいワークショップだったと記憶しているのに、必要なタイミングで頭の引き出しから引き出せなかった理由は一つで、教わったところで止めてしまって、自分でワークショップを開かなかったからです。参加レポートの最後にこう書いているのに。。。

ぜひ組織に持って帰ってほしいということだったので、折を見て自社でもロールプレイをやってみたいと思う。

自分でやらないと身につかないと強く感じたので、このワークショップを今年中にやるとともに、OSTでいただいたアドバイスは明日からどんどん実践しようと心に決めました。

おわりに

学びの一部を書いただけですが、それでも長くなりました。それくらい濃密な3日間でした。
主催のアトラクタの方々をはじめ、集いに参加された全ての方々に感謝します。本当にありがとうございました。
最後に集合写真を貼るとそれっぽいと思うのですが、私なんと呑気に部屋の片付けをしていて、集合写真に写り損ねるという失態をおかしたので、集合写真は載せません。
集合写真に写るという忘れ物を取りに行くためにも、次回も参加したいです。

更新履歴

9/17 10:00 石井さんのお名前と「スクラムはゴールではなくゲート。」の段落を追記

*1:その後このイベントはコーチングリトリートとも呼ばれ、リトリートは「日常生活から離れてリフレッシュする時間をもち、心身ともにリセットする」という意味と知り、やっとイベントの趣旨が理解できました。

*2:複数の視点(データ、調査者、方法、理論など)を組み合わせることで、物事の理解の妥当性をより高めること